明日、建築家の隈研吾さんの講演会がパシフィックホテル沖縄で開催されます。
講演会のタイトルは『建築家、走る』。
清野由美さんの聞き書きによる同タイトルの本がありますが、
その紹介は次の機会にとっておくとして、予習がてら2004年に岩波書店から発行された
隈さんの著書『負ける建築』を紹介したいと思います。
本書は隈さんが1995年から2000年代始めに書いた文章を集めたものですが、
20年近く経った今読んでも刺激的で目が啓(ひら)かれるような内容です。
20世紀の建築を「突出し、勝ち誇る建築」とし、それとは対極の
「象徴にも頼らず、視覚にも依存しない建築」としての「負ける建築」が
いったいどのように可能なのかを考察しています。
ただ、隈研吾建築都市設計事務所が設計した建築の解説本ではなく、
むしろ隈さんのたずさわった建物はまったく登場しません。
ぼくはこの本は隈さんの目を通して見た近代建築史として読めると思いました。
「ケインズ経済学」、「デ・スティル」、「ルドルフ・シンドラー」、「村野藤吾」、
「内田祥哉(よしちか)」、「住吉の長屋」…といったキーワードや人名を通して
20世紀の建築史を隈さん独自のウィットに富んだ目線で解説しています。
これを読んだ10数年前「脱領域化」が自分の中でブームだったことを
久しぶりに思い出しました。
「あとがき」を読んで現在進行中の新国立競技場などの仕事を俯瞰してみると
とても感慨深い印象を受けるかと思います。
(K)