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建築とサイン

今週クレールアーキラボの事務所の入口に新しくサインが掲げられました。

そう、事務所には設立3年目になる今まで「看板」がない状態だったのです。

 

clair sign 

 

事務所の入っている建物は正面から見て入口(というか玄関)が2つあるため、

初めて訪れる方に度々ご不便をかけることがありました。

これからは事務所の前で、どっちから入ればいいのと戸惑う人は

だいぶ少なくなることでしょう。

 

その効果はさておき、サインが入った建物の佇まいを眺めてぼくが思ったことは、

「なんか設計事務所っぽい…」でした。

他のスタッフからはおしゃれなカフェみたいというコメントも出るほど。

まさに画竜点睛(がりょうてんせい)とはこのこと。

 

ふと、これは現代言語学の方法を確立したスイスの言語学者

フェルディナン・ド・ソシュール(1857-1913)が定義した

シニフィアン(signifiant)とシニフィエ(signifié)という概念で

説明可能なのではないかと思ったのです。

もちろんサインが「シニフィアン」で、

事務所としての空間が包含する諸々の事象が「シニフィエ」です。

確固たるシニフィアンが与えられたことでシニフィエがよりくっきり際立つと。

 

……。

今回は無責任ながらその参考文献だけを記して済ませたいと思います。

2002年 文藝春秋発行 内田樹著『寝ながら学べる構造主義』の第二章と、

2003年 光文社発行 町田健(まちだけん)著『コトバの謎解き ソシュール入門』。

 

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前者は構造主義の始祖として、ソシュールに1章を割いているのですが、

ソシュール解説に必ず登場する前述の「シニフィアン/シニフィエ」も

「ラング」、「パロール」や「言語の恣意性」などの専門用語も全く出てきません。

内田先生が伝えているのは、

「ある観念があらかじめ存在し、それに名前がつくのではなく、

 名前がつくことで、ある観念が私たちの思考の中に存在するようになるのです。」

というソシュールが発見した知見のみ。割り切っています。

後者はソシュールが100年前に遂行した現代言語学という新しい学問を

泥臭ーく整備していく道筋をじっくり追うことができます。

(おそらく今はもっとわかりやすい入門書がたくさんあると思います。)

 

 

画竜点睛とかシニフィアンとかごちゃごちゃ言いましたが、

サインが付いて2日目、それはあまりにも建物に馴染み過ぎて

まるでずっと以前からそこにあったかのようです。

 

サインは真鍮製で表面はとくに防錆処理などは施していません。

これがコンクリート打放しの外壁とともにどのように経年変化していくのか

これから楽しみです。

(K)

 

中間領域

新潟県苗場スキー場では今ごろどんな音が響いているのだろうと

時々想像しながら仕事をしていた土曜日でした。

最近、有名なロック歌手の訃報がありましたね。

11月には来日公演も決まっていたLinkin Parkのボーカル、

チェスター・ベニントン(Chester Bennington)さん。

まだ41歳という若さでした。

 

2009年8月に沖縄県北谷町美浜の陸上競技場で開催されたLinkin Parkの単独ライヴ、

ゆっくり回る風力発電の風車をバックに

前のめりにマイクを握って絶叫するチェスターさんの姿がとても印象に残っています。

もうあの姿が見れないというのは非常に残念です。

 

話がつながるのかは分かりませんが、

前回に引き続き内田樹の本を紹介します。

 

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2004年 医学書院発行の『死と身体―コミュニケーションの磁場』です。

なにやらシリアスなタイトルですが、

内容は「身体」をフックに内田先生流に思考を繰り広げるコミュニケーション論と、

「死」というよりは「死者」という概念についてのお話です。

人類が「埋葬」というものを開始した時、はじめて人間が人間になったのではないか、

つまり人間は動物ではじめて「生体」と「死体」のあいだに「死者」という

どちらにも属さないカテゴリーを作ったのではないか、

という知見を興味深く読みました。

 

「(前略)あるいは『死者とコミュニケーションできると

 自分のことを考えた生物を人間と呼ぶ』と定義してもいいと思います。」

 

その中間領域に行ってしまったチェスターさんですが、

内田先生が「人間は、死んだ者とさえ語りあることができる」と説いても、

その寂しさが低減することはありません。

まずは彼らの新譜を手に入れ、まだ知らない彼の声に触れたいと思います。

(K)

ハチャーガマク

世間では夏休みも始まり、空に浮かぶ雲を見ていても『夏〜』な感じが漂っていますね。

 

そんな夏!な感じやドライブの時に聞きたくなるのが、ノリノリな音楽。

よく聞くアーティストの中に、県内アーティストのKACHIMBAがいます。

最近CDが発売されて、いつものごとくCDを購入&リピートで聴いています。

そのタイトルが『ハチャーガマク』(沖縄の方言でセクシーな女性の腰つき(くびれ))の意味だそうです)

 

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ジャケットもカッコよく、沖縄アーティストの『EITEN』という方の作品とのこと。

 

この夏のドライブソングになりそうです!

(Y)

困難な結婚

内田樹は好きな書き手の一人です。

内田先生(自然と”先生”と敬称をつけてしまいます)の肩書きはたくさんありますが、

ぼくから見るとフランス現代思想専門の哲学研究者であり、武道家です。

たしか書き手としての実質的なデビューは50代と遅かったはずですが著作の数は膨大。

共著やインタビュー本を合わせると優に100冊は超えるかと思います。

読んでも読んでも追いつきません。

 

今回、彼が自宅兼道場を建てた際の顛末を書いた本を紹介しようと思ったのですが、

その前にちょうど1年前にアルテスパブリッシングから発行された

比較的新しい、興味深い本を取り上げたいと思います。

その名も『困難な結婚』です。

 

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この挑発的なタイトルがつけられた成り行きは「はじめに」で説明されていますが、

もともとは内田先生の「街場の○○論」シリーズの1冊という位置づけのようです。

結婚の予定がある人や既婚者は手に取りにくそうな本ですよね。

 

内容はというと、結婚にまつわる良くありそうな質問に、二度の結婚の経験がある

内田先生が彼らしい独自の視点で回答するというQ&A形式になっています。

勝手に総括しても伝わらないと思うので本文からいくつか引用します。

 

「結婚は『病気ベース・貧乏ベース』で考えるものです。」

「どんな人と結婚しても、『自分がこんな人間だとは知らなかった』ような人格特性が

 登場してきます。(中略)それはいわば配偶者からの『贈り物』みたいなものです。」

「結婚して人は大人になる。大人になってはじめて、結婚してどういう『いいこと』が

 あったのか、事後的・回顧的にわかる。」

「今よりも不幸にならないように結婚するんです。」

「家族って、ほんとうに暫定的な制度なんです。」

「あのですね、他者というのはとっても遠いところにいるんです。」

「結婚生活を愛情と理解の上に構築してはならない」

「女の人がものを置く秩序については、あなたの理解を絶した秩序に従って構成された

 『都市』の風景を見ているようなつもりで『鑑賞する』という立場に

 徹底することをお勧め致します。」

 …

 

2016年後半に話題になったドラマ『逃げるは恥だが役に立つ(逃げ恥)』の最終回を

思い返すと星野源が演じる平匡さんはこの本を読んでいたのかなと感じてしまいました。

 

また、家族という概念の捉え方については、まったくトーンの異なる下重暁子さんの

『家族という病』(2015年 幻冬舎新書)と通じるところがあり興味深かったです。

 

将来に向けて勉強になりました。

(こんな感じでこれからは建築本以外の書籍も紹介していきたいと思います。)

 

(K)

隈さんが来る

明日、建築家の隈研吾さんの講演会がパシフィックホテル沖縄で開催されます。

講演会のタイトルは『建築家、走る』。

清野由美さんの聞き書きによる同タイトルの本がありますが、

その紹介は次の機会にとっておくとして、予習がてら2004年に岩波書店から発行された

隈さんの著書『負ける建築』を紹介したいと思います。

 

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本書は隈さんが1995年から2000年代始めに書いた文章を集めたものですが、

20年近く経った今読んでも刺激的で目が啓(ひら)かれるような内容です。

20世紀の建築を「突出し、勝ち誇る建築」とし、それとは対極の

「象徴にも頼らず、視覚にも依存しない建築」としての「負ける建築」が

いったいどのように可能なのかを考察しています。

 

ただ、隈研吾建築都市設計事務所が設計した建築の解説本ではなく、

むしろ隈さんのたずさわった建物はまったく登場しません。

ぼくはこの本は隈さんの目を通して見た近代建築史として読めると思いました。

「ケインズ経済学」、「デ・スティル」、「ルドルフ・シンドラー」、「村野藤吾」、

「内田祥哉(よしちか)」、「住吉の長屋」…といったキーワードや人名を通して

20世紀の建築史を隈さん独自のウィットに富んだ目線で解説しています。

これを読んだ10数年前「脱領域化」が自分の中でブームだったことを

久しぶりに思い出しました。

 

「あとがき」を読んで現在進行中の新国立競技場などの仕事を俯瞰してみると

とても感慨深い印象を受けるかと思います。

(K)

建築とマカロニ

ちょっと古い本を紹介します。

1995年TOTO出版発行の『建築とマカロニ』です。

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監修は先日磯崎新さんの講演会を主催した日本建築家協会(JIA)の前身である(社)新日本建築家協会。

建築家に建築以外のモノ、例えば眼鏡、カップアンドソーサー、

ペットの家やストリートファニチャーなど、をデザインさせて面白がるという企画はけっこうありますが、

この本はそんな企画の先駆けともいえる1995年に工学院大学で開催された展覧会

『建築家たちのマカロニ展』を書籍化したものです。

グラフィックデザイナーの原研哉さんが仕掛け人となって

15名の建築家と5名のゲスト・アーティスト(原さんも含む)に新しいマカロニのデザインを依頼しプレゼンさせています。

 

その作品たちですが、面白いほど多種多様なのです。

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隈研吾さんはマカロニの構築性を解体することをテーマとして掲げ、

茹でると普通のパスタになってしまうものを提案しています。

 

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逆に原研哉さんは建築家に対抗するためには三次元を志向しなければならないとして、

熱帯ドリームセンターの塔(以前のクレールブログ参照)のような

マカロニ、題してタテロニを提案しています。

 

何と言ってもこの本の最大の功労者は、提案されたマカロニのフードコーディネートを行い、それをイラストにまとめ、先生方の難しいコンセプトをユーモアたっぷりの読みやすい文章で受け止めてくれている、こぐれひでこさんです。

こぐれさんのイラストのおかげで専門家だけでなく一般の人にも楽しめる本になっているかと思います。

(K)

バイブル

 

今日は最近読んで衝撃を受けた漫画を紹介したいと思います。

隣の席のKさんに薦められて買っちゃいました。

タイトルは「ママはテンパリスト」

 

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最初のページのセリフがなんと「すいません 育児ナメてました」

まさしく今の私なのです。

 

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漫画家さん本人の育児エッセイ漫画です。

息子の「ごっちゃん」の出産時から幼稚園までの体験談

とにかく面白すぎなんです。

笑って泣ける漫画(感動で泣けるのではなく、笑いすぎて涙が出てくる)

 

病院の待合室で読んでいる時、笑いをこらえられず「ヒヒヒ」と言ってしまい、

夫と子供が寝静まった後に読んだ時は、笑いを必死に抑えていたら涙が止まらず。

 

息子の「ごっちゃん」がすごい子なんです。

賢いというか笑いの才能があるというのか。

「わかるわかる〜」と思うエピソードもありますが、

「うそ!信じられない」と思うような面白エピソードまで。

 

この漫画はお子さんがいない人、育児の経験のない人も楽しめると思います。

面白すぎて何も考えずただただ笑える。

育児に限らず家庭でも仕事でも、気持ちが前向きになれる漫画です。

これから私の人生の「バイブル」になりそうです。

 

(A)

入り込む本

週明け月曜日。

雨が降ったり曇ったり、晴れ間が出たりと

くるくる変わる空模様。

 

お昼を食べに立ち寄ったお店に素敵な本が置いていて

大人3人で夢中になってしまいました。

 

妖精の世界のポップアップ絵本。

そのままでも美しい絵本ですが

やはりポップアップすると本領発揮です。

 

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写真で伝わるかなぁ。

この入り込んでしまう世界。。。いやはや飛び込みたくなる世界です!

 

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立体の世界なので、建築にも通づる気がしたりもして

色々な角度から覗き込んで

絵本の世界へ入り込みました。

 

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偶然に出会った絵本に魅了された週初め。

Lucky !!!

 

(S)

メルセデスのミックステープ

 

今回は音楽の話です(横文字が苦手な方は飛ばし読み推奨)。

 

かつてドイツの自動車メーカー、メルセデス・ベンツがネット上で定期的に

Mercedes-Benz Mixed Tapeという世界中から良質な楽曲を集めた

コンピレーション・アルバムを公開していました。

過去形で語らなければならないのが残念ですが、現在は終了しています。

 

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確か、2004年6月に『Mercedes-Benz Mixed Tape 01』がリリースされ、

8~10週ごとにエディションを重ねていきました。

一昨年の2015年8月に『─ 63』が、前触れもなくこれが最後のリリースですよ

というアナウンスとともに配信されて、約11年の歴史に幕を下ろしました。

 

新しいエディションがアップされると古いものにはアスセスできなくなるシステムで、

何度かダウンロードし損ねそうになりながらも

いちおうぼくのiTunesライブラリには全エディションがずらーっと並んでいます。

全部で730曲あまり、iTunesによると再生時間は2.1日に及びます。

 

内容はというと、若手アーティストの発掘というコンセプトのためでしょうか、

ほとんど名前も聞いたこともないミュージシャンばかりです。

でも、集められている作品のレベルはそうとう高い。

おそらく非常に優秀なサウンドキュレーターのお仕事かと思われます。

ジャンルは Indie Rock、Electronica、Broken Beats、Nu Jazz、Nu Soul、

Hip Hop、Electro Pop、Lounge、Reggae…と多岐に渡ります。

(ちなみに後半はジャケットのアートワークも無名のアーティストを起用しています。)

 

雰囲気をつかむため、あえて知名度がありそうな参加アーティストを挙げると、

Sébastian Tellier (#04)、[re:jazz] (#05)、Alice Russell (#09)、Tosca (#11)、

Ben Westbeech (#15)、4hero (#16)、Tei Shi (#53)、I Know Leopard (#63)

Rhye (The Sound of mb!) …らが曲を提供しています(かっこ内はコンピの番号)。

日本人アーティストも沖野修也•好洋の兄弟DJユニット、Kyoto Jazz Massive (#12) や

トラックメーカーの Kan Sano (#21)などが参加しています。

 

ついでにぼくがMixed Tapeを通して知った★5つのアーティストを

ほんの一部ですが紹介したいと思います。

Talc (#09)、Columbia Pirates (#17)、Alex Bowen (#24)、Simdiese6 (#26)、

Nosoyo (#41)、Silence Is Full Of Birds (#47)、Fe (#53)、The Day (#59)、

Soia (The Sound of mb!)…。これぐらいにしておきましょう。

少々強引に建築的な話を絡めると、#59に収録されているThe Dayの「We Are」

という曲のミュージックビデオでは、SANAA(妹島和世+西沢立衛)設計の

ツォルフェライン・スクール(ドイツ・エッセン)が効果的に使われています。

 

このコンピレーションがすごいのはこれだけ幅広いジャンルが揃っているにも関わらず、

全体にシャッフルをかけてもプレイリストとしてほとんど破綻しないことです。

一言で言い表すとスタイリッシュ。

かなりジョートーな夏の作業用BGMプレイリストのひとつです。

 

メルセデス・ベンツさんには強くリリース再開を希望します。

世界の若手アーティストたちのためにも。

(K)

とてもバックナンバー

 

毎月購読している雑誌はありますか?

私は数冊ありまして、未だに電子マガジンに変えられず

やっぱり雑誌は指でめくりたい派です。

 

で、ですよ。。。

どうしても毎月購入するので大量になってきます。

そうなるとどんなに収納を充実させても追いつかないので

なくなく捨てることになるのですが

どうしても捨てられないお気に入りが出てきます。

 

先日、整理して残ったこちらは題して

「とても忘れられないバックナンバー」

 

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年代を見ると。。。

2015・2013・2011版でした。

きっと何度も精査されて生き残った私の精鋭チーム。

 

忘れられないページがパラパラとめくるだけで

次から次へと出て来ます。

 

大きな桑の木がテラスの主役になっている家や

 

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緑の中にあるシンプルなリゾートホテル

 

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今見てもやっぱりとても素敵で

色褪せない美があるように感じます。

これからもきっと捨てられないバックナンバーだろうなぁと

改めて感じながらめくりました。

 

(S)

 

アーキトラベル

 

連休中、本棚の奥からけっこう昔に買った本を引っ張り出してきて読みました。

たぶん最近身近でそういう話を聞く機会が多かったせいからかもしれません。

その本は2002年にTOTO出版から発行された

中谷俊治著『アーキトラベル ─ 建築をめぐる旅』です。

 

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中谷氏は建築家・原広司が主宰するアトリエ・ファイ建築研究所出身の建築家です。

本の内容は、中谷氏が10年間原広司の下で建築設計に従事し退職したのち、

約2年間かけてイギリスはロンドンを拠点にして敢行した

12回にわたる建築をめぐる旅の記録です。

エジプトから始まってヨーロッパの国々、アメリカ、インドと計20の国で出会い

身体で体験し感動した建築について熱のこもった筆致で綴っています。

 

連休は籠ってこの本で「動かない旅」を楽しみました。

(K)

スケッチは言葉である

 

前回CADの話をしたばかりですが、

今回は手描きのスケッチについて書かれた本を紹介したいと思います。

2009年に建築文化シナジーから発行された

建築家・手塚貴晴著の『手塚貴晴の手で描くパース』です。

 

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パースとはパースペクティブ (perspective) の略語で透視図法のこと。

建築の分野では図面だけではイメージしにくい空間の完成予想を

任意の視点から見たままに描き起こした絵を指します。

この本を読むとパース=「消失点を持つ絵」ということがよく分かります。

 

技術的な解説のパートは類書のそれとほとんど同じ内容なのですが、

すべての説明図が手塚氏の描くカジュアルな動きのあるスケッチなので、

透視図法の少々複雑な原理もすっと理解できるように工夫されています。

 

しかし、本書の肝は単なるテクニックの指南ではありません(…たぶん)。

手塚氏は、CADを使いこなそうとして逆にCADにコントロールされている

昨今の建築学生や設計業界の若い人に向けて

手を動かして考えることの重要性を切々と説きます。

 

「図面を10枚並べて解けなかった問題が

 1枚のスケッチを描くことによって簡単に解決することはざらである。」

 

実際、クライアントや現場での職人さんとの打合せの中で、

長々と口で説明するよりも一枚のスケッチであっという間に

イメージの共有ができてしまう場面はよくあります。

著者も言うようにスケッチは言葉だと実感する瞬間です。

 

手塚氏の手による、筆のスピード感が半端ない建築パースだけでなく、

学生時代の制作課題や旅先での水彩画なども掲載されていて観て楽しめる本でした。

個人的には鉄骨構造の部分詳細パースに見入ってしまいました…。

 

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(K)

建築のあたらしい大きさ

 

はじめまして。

この4月から正式にクレールアーキラボのメンバーに加わりました。

ただの建築好き30代(昭和生まれ)男子です。

 

さっそくベタではありますが最近読んだ建築の本を紹介したいと思います。

石上純也の『建築のあたらしい大きさ』です。

これは、2010年に石上氏が豊田市美術館(←谷口吉生設計)で、

5つの大きな模型をメインに据えて開催された展示会のカタログ的な本です。

 

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石上氏の構想する建築は普通の建築の範囲を軽々と超えていて、

一度見たり聞いたりしただけではなかなか理解できません。

たとえば、最初の章「雲を積層する」で紹介されるのは、

積乱雲と同じスケールだという幅24km×奥行き19km×高さ13.75kmの

「建築」の縮尺1/2500の模型です。

(つまり実際の模型のサイズは9.6m×7.6m×5.5m。)

厚さ15μmの不織布とφ700μmの炭素棒で構成されたその模型自体が

どうして成立しているのか、ぼくは未だに理解できません。

 

本の内容は展示された模型やプランの他に、

生物学や環境学などの専門書から引用された図表であふれています。

建築の本というより何か自然科学の本を読んでいる気分になります。

意外と建築専門の人より一般の人のほうが素直に楽しく読めるのかもしれません。

 

石上氏の最初の建築の実作で建築学会賞も受賞した

神奈川工科大学KAIT工房を扱った2つ目の章「森を計画する」は、

個人的にそこを数年前に訪れたことがあるので興味深く読むことができました。

この建築の体験についてはまた追々紹介できればと思います。

 

展覧会の本が出版されるのは沖縄に住んでる者にとってとても助かります。

ただ、実物を観たかったなという後悔の気持ちにもなってしまいます。

読み進めながら、行けなかったお気に入りのミュージシャンの

ライブDVDを観ているような感覚になりました。

 

(K)